山本理顕展 ― コミュニティーと建築

(2025年|横須賀美術館)
2025年7月19日から11月3日まで、横須賀美術館 にて
「山本理顕展 ― コミュニティーと建築」が開催された。
2024年にプリツカー賞を受賞した建築家
山本理顕の約50年にわたる設計活動を紹介する展覧会である。
会場に並ぶのは、模型や図面、スケッチ、ドローイングなど約60点の設計資料。
建築の“完成像”よりも、その背後にある構成や思考を読み取ることのできる展示構成となっていた。
設計資料から立ち上がる建築
展示は時代ごとのプロジェクトを軸に構成されていたが、それぞれが独立して並ぶのではなく、「閾(しきい)」というテーマのもとに読み解かれる。

初期の住宅作品である1900年代の
ガゼボとロトンダは、住宅でありながら外部との関係を強く意識した構成を持つこの作品で、私的空間と公共性の境界についての思考を早い段階から含んでいたことを示している。

一方、近年のプロジェクトである
名古屋造形大学は、教育施設という公共性の高い建築においても、内部と外部、人と人との関係性をどのように構成するかという問いが、模型を通して可視化されている。
こうして初期から近年までのプロジェクトが並ぶことで、山本理顕の設計活動が一貫して空間の「境界」を扱ってきたことが浮かび上がる。
テーマ「閾」と展示構成

本展のテーマである「閾(しきい)」は、公共空間と私的空間のあいだにある境界を指す概念である。
展示は、この概念を説明するパネル中心の構成ではなく、設計資料そのものによって示す形式がとられていた。
図面を読み、模型を覗き込みながら、来場者が空間構成を追体験する。そのプロセス自体が、建築の思考に触れる体験となっていた。
建築の中で建築を観る

展覧会の会場である横須賀美術館は、山本理顕自身が設計した建築である。
東京湾を望む立地に建ち、ガラスを多用した構成を持つこの美術館の空間もまた、内外の関係を意識した設計で知られている。
その建築空間の内部で、模型や図面を通して設計思想をたどる構成は、作品解説にとどまらず、建築家の思考を立体的に体験させる展示となっていた。